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2008年12月02日(火)
京王八王子駅
期間:11月15日~11月30日
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◆「わらぐつに比べると、草履(ぞうり)作りは簡単なもんだよ」
笑顔でこう話すのは、岩渕茂治さん(88)。大正9年、岩手県の生まれ。 物心ついたころから、雪が融けるまでの冬の仕事として、わらぐつを作り始めた。 今でも、わら製品を作るが、主にこしらえるのは布草履。 ◆昨年の秋のことだった。 八王子市内で、20年以上もボランティア活動に携わる主婦が、 岩渕さんの姿勢や行動に惹かれて、押しかけ女房ならぬ 押しかけ弟子として入門。縁あって、布草履作りを楽しむ、 「ぞうりグループ」の発足となった。 メンバーは、そのまま捨てるにはもったいないタオル地や洋服、 スカートの古着を持ち寄って岩渕さん宅に集う。 ◆空間は、先生の岩渕さんと弟子が切磋琢磨しながらも、 地域の交流の場となっている。わらは綯(な)うもので、撚(よ)るのは糸。 布草履の製作の場合、編むという表現が一般的だそうだ。 岩渕さんは細かなことは省いて、要点のみを指導する。 仲間の一人は、片方作るのに2時間ほどかかり、指の使い方、 出来栄えともに、「まだまだ、初心者ですよ」とお互いを評価する。 ◆居間では、おしゃべりを交えながら、有意義なひとときを楽しむ。 居合わせた仲間3人が、「私たち、手よりも、口の動いている時間が多いんですよ」と打ち明ける。 「でも、数をこなしていくうちに、うまくなるでしょう」と声を弾ませた。 目標は、「早く上達して、施設やバザーに出品すること」 ◆布草履は布地や色使いの組み合わせで、質感の異なる作品が出来上がる。 工夫次第では、足元に適度な大人のかわいらしさを演出してくれる。 履きやすいものを作るには、綿のゆかた地を用いるのが最適という。 履きやすさ、丈夫さ、機能性を考慮すると、最も神経を集中させるのは、 「つま先と、鼻緒の付け根の加工」と岩渕さんが説明する。 80年の長きに渡り、培ってきた技を語る言葉に重みがある。 ◆人様から教わったというよりも、技術を盗んで覚えたことが多い。 日曜大工や園芸、野菜栽培など人生の糧となる多くのものを身に付けた。 頭脳が、そのまま指先と繋がっている。 「何事も、最初から徹底的にやらないと気が済まない」気だての持ち主。 職人根性は、きわめて旺盛だ。「だが草履にしても、作るのは得意なんだが、 売るほうの商才が乏しくてね」と苦笑。 作った草履は飾り物として展示するほか、懇意にしている知人にも提供する。 ◆今年米寿を迎えたが、まだまだ元気いっぱいで暮らしを楽しむ人生の達人だ。 健康の秘訣は、「きっと、こんな事を、続けているからなんだろうね」と 目を輝かせて語る。食事も一日3食、自ら調理してハリのある毎日を過ごす。 日常の行動は、さっそうと電動自転車を駆る。 頼まれれば、自身よりも若い老人ホームの入所者の話し相手も務める。 ◆居間には、故郷の美しい自然を描いた絵が飾られている。 山河を静かに見つめる目線に故郷への回想と、その地で育まれ連綿と 受け継いできた技術伝承者としての誇りを感じた。 ●連絡先 「ぞうりグループ」岩渕茂治 住所・八王子市諏訪町 310-2 電話・042―651-4390 ■備考 ・中国古代、「草履」とは、わらや草でつくった履物のこと。形は靴である、 わらぐつ(草鞋)が日本に伝わった。その後、風通しのよい鼻緒式のわらじに 作り変えられ、さらに簡略にしたものが草履。(平凡社世界大百科事典) ・わらぐつは、江戸期に刊行された越後の風土記である「北越雪譜」 (鈴木牧之・編撰)の、「雪中歩行の用具」の項にも紹介されている。 ・「夏川をこすうれしさよ手にぞうり」(蕪村) 写真 (左)ぞうり編み台で、編み込みの工程 (中)「ぞうりグループ」の、お弟子さんたち (右)カラフルな作品と、先生の岩渕さん 掲載日付:2008/07/01
沿線ライター:キョンシーさん
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