◆京王八王子駅からJR八王子駅方向に歩いた、一二三(ひふみ)横丁にある。
創業は昭和7年。先代が都心の店で修業し、八王子でうなぎ割烹を開いた。
現在は、2代目にあたる時田宗作さんが、80年近い店の暖簾を守る。
2007年3月、市内から移り現在地に店を構えた。
◆蒲焼はうなぎとたれ、焼き加減が勝負という。
器用な手つきで、うなぎを背から割いて、串刺し、焼いて蒸す。
事細かな記述は控えるが、一連の工程に美味しく焼きあげる技術を受け継いでいる。
備長炭で焼き上げたうなぎは、ふわーっとして、しつこさがなく、さっぱりした風味が持ち味。
注文を受けてから配膳までの時間は、約5分を目安にしているそうだ。
職人さんの業界用語でもある、下準備、「段取り」の成せる業(わざ)であろう。
◆ウナギが描かれた名刺には、店名の「と、き、た」と刷り込まれている。
まるで隠し文字のようでありながら、センスの良さがうかがえる。
考案したのは、店主の奥さまの時田美鈴さん。
先代の心象を損ねないように腐心し、試行錯誤を重ね完成度の高い作品に仕上げた。
◆「うなぎ屋の前でともかく深呼吸」
うなぎ屋の前で、匂いだけ頂戴して通りすぎる行為を江戸の昔、川柳に詠まれた。
だが、「ダイニングときた」のメニューは、こうしたイメージを、
ちょっぴり修正してくれそうだ。
例えば、ランチのうな丼は、本物の味をリーズナブルな価格で提供している。
うなぎに、サラダ、ミニ茶碗蒸し、お漬物、汁物、コーヒーが付いて料金は、¥950
◆茶碗蒸しには、ギンナンやシイタケの具を添える。
「市内には、茶碗蒸しが好きな人が多いんですよ」と地域に密着した気配りをにこやかに話す。
うな丼のほかにも、刺身ランチ、豚ぽんランチ、鶏照りランチや日替りランチなどが用意されている。
お客さんの年代は、20~80代で男女半々とか。
◆長野県の出身。ホームグラウンドの北アルプスで、山小屋の仕事を経験したことがある。
そこで得た知識を業務に活かす。3000メートルの高地で、おいしくご飯を炊く方法?
ムダにしない素材選びや、味付けとは?
手元にある食材で素早く、調理する方法は?
「山に行って、環境問題を始め良い勉強になりましたよ」と笑顔を見せる。
◆趣味は写真撮影や登山、スキー、スイミングと幅広くこなすスポーツ・ウーマンである。
ところが、最近多忙のために、オンーオフの切り換えがままならないとか。
「一息つくころは、日付が変わっていますね」と残念そう。
好きな言葉は、「感謝・健康であること」
尊敬する人物は、多くの人に勇気と希望を与えたヘレン・ケラーさん。
「ヘレンさんもすごい人でしたが、その先生のことも尊敬しますね」と教養の一端をのぞかせる。(※1)
好きな花は、高山植物のエーデルワイスとコマクサ。
◆内装は木のテーブルや椅子がソフトな印象を醸し出して、落ち着いた雰囲気。
定員は、カウンター席とテーブル席をあわせて28席。
広すぎず、狭すぎずの空間は宴会にも利用できる。
メニューには、馬刺しや、鶏、豚肉をアレンジして、お酒にもよく合う一品を揃えている。
◆仕事の喜びは、お客さんからお誉めの言葉を掛けられるとき。
うなぎ料理を敬遠していた人から、「このお店のうなぎは、食べやすいわ!」
「さっぱりしていて、おいしい!」「また、来るわ!」
こんな賛辞を送られては、もてなす側も、「もちろん、うれしい」
これからの抱負は、
「お店をもっと多くの方に知っていただいて、おいしいうなぎを味わってもらいたい」と結んだ。
■取材を終えて
調理場では、仕込みに余念がない店主の時田さんの後姿があった。
代わりに、語り手の大半を引き受けていただいた奥さま。
女性ならではの視点で、内助の功を発揮し店を盛り上げる。
なお、「ダイニングときた」を紹介してくださいました、うなぎ卸しの
「浜名亭」の社長にもお礼を申し上げます。
備考
(※1)映画「奇跡の人」では、ヘレン・ケラー(1880~1968年)役に、
パティー・デューク。女性家庭教師(サリバン)役に、アン・バンクロフト。
写真
(左)右下の赤い「鈴」に、作者の名が込められている。
(中)店舗付近の案内図。
(右)ランチの一例、格安のうな丼。
(写真提供・ダイニングときた)
掲載日付:2008/05/20